Q & A

当事務所にこれまでにお寄せいただいたご質問をカテゴリーに分けてまとめました。具体的な相談などに対するご回答も掲載しておりますので、ご参考にしてください。
ただし、質問及び回答のいずれも、あくまでも一般的な参考用に概略を掲載するものですので、具体的なケースについては、個々に専門家などの助言を受けることをお勧めいたします。

婚姻

基本的に夫婦のどちらかの住所・居所のある市役所(mairie)で手続をします。
市役所に必要書類(戸籍、身分証、住居証明など)を提出した後、係員が夫婦双方と面接し、婚姻意思等を確認します。この確認が終わると、婚姻する旨が公示されます。公示の10日後以降に、市長主宰の下、婚姻式が行われます。この婚姻式で夫婦双方が婚姻意思を表明し合い、婚姻届にサインをすると婚姻が成立します。
原則的に、外国人同士でもフランスで、フランスの方式にしたがって婚姻することができます。この場合、フランスの方式で婚姻した後、本国に届出をするのを忘れないようにしましょう。
また、日本人同士の婚姻であれば、日本で市役所に届出をするのと同じように、在仏日本大使館に届出をすることによっても婚姻が成立します。
パックス(PACS=p は、「連帯市民協約」と訳されます。同居して共同生活を営もうとするカップルが契約を結び、婚姻関係類似の相互扶助関係を結ぶことを言います。この契約に戸籍や身分証を添えて、公的機関(市役所または公証人)に届出することによって、パックスが成立します。パックス成立後は、税金や社会保険など公的サービスの面で優遇を受けることができます。パックスをしたカップルの間では相互扶助義務等の民法上の義務が生じますが、一方が死亡した場合に他方は法定相続権を有しません。
日本の法定制度は夫婦別産制です。日本民法762条1項には、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」という規定があります。
もっとも、日本の判例上、婚姻後別居時まで夫婦の協力によって形成された財産については、原則として折半されることになります。
他方、フランスの法定財産制はcommunauté réduite aux acquêtsと言い、夫婦共有財産制が原則です。もっとも、共有財産とされるのは原則として婚姻期間中夫婦によって形成された財産で、相続や贈与によって得た財産は除かれます。
上記はデフォルトの財産制ですが、当事者は合意によって、上記法定財産制とは異なる内容の夫婦財産契約(いわゆるプレナップ契約)を締結することができます。フランスでは婚姻後であっても夫婦財産契約を締結・変更することができますが、日本では婚姻前に締結する必要があるので注意が必要です。
夫婦財産契約は、フランスでは割とポピュラーで公証人が担当しますが、日本ではまだ一般化されていないので、契約内容については、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

離婚

  • ①協議離婚の場合 協議離婚の場合、弁護士(夫婦双方がそれぞれ代理人弁護士を立てる)が離婚協議書を作成し、15日の熟慮期間の後、夫婦双方及び各代理人がサインをし、これを公証人に提出することによって、離婚が成立します。
  • ②裁判離婚の場合
    • 1) 離婚の合意はあるが、離婚の条件が整わない場合
      裁判官が離婚の条件を決定し、離婚を宣言します。
    • 2) 離婚の合意はないが、1年以上の別居が続いている場合
      裁判官が離婚の条件を決定し、離婚を宣言します。
    • 3) 有責配偶者がいる場合
      夫婦の一方による重大かつ反復した婚姻義務の違反があり、それによって夫婦共同生活の維持が著しく困難になる場合には、他方配偶者は、離婚を請求することができます。
夫婦の合意がない場合には、1年以上の別居が続いている、または夫婦の一方が有責配偶者であるという状況が必要になります。
離婚をする前に別居をする必要はなく、夫婦の合意があれば離婚が可能です。
ただし、夫婦の合意がない場合には、1年以上の別居が続いている、または夫婦の一方が有責配偶者であるという状況が必要になります。
日本人とフランス人のカップルの場合、基本的にフランスでも離婚の手続ができます(協議離婚、裁判離婚)。それは、日本に住んでいる場合でも同様です。もっとも、フランスでの離婚手続の際、夫婦双方の意思を確認したり、事情を聴取したりする必要が生じ、その際にフランスへの出頭を求められることはあります。また、フランスでの離婚成立後、日本で離婚の届けをする際に問題なく受け付けられるかを事前に日本の役所に確認しておくとよいでしょう。
夫婦の一方がフランス人の場合は可能です。
しかし、外国人同士の夫婦の場合、その外国人夫婦の住所・居所や、その外国人の本国法によって異なります。日本人同士の夫婦がフランスに住んでいる場合、原則的にフランスでフランスの方式に基づいて離婚の手続ができますが、在仏日本大使館に届け出ることによって日本の方式に基づいて協議離婚をすることもできます。
フランス民法上も、夫は妻に対して貞操義務を負いますので、夫に対しては、不貞慰謝料を請求することが可能です。
他方、不倫相手の女性からは、不貞慰謝料をもらうことはできません。
子供の親権は原則として離婚後も共同親権となります。
特別に夫婦財産契約を結んでいない場合は、法定夫婦財産制(communauté réduite aux acquêts)が適用されます。その結果、婚姻中に夫婦が労働等によって得た財産については、半分ずつ分けることになります。この点は、日本の財産分与の方法と似ています。

子ども

フランスはハーグ条約締結国ですので、ハーグ条約に基づく子の返還請求という手段を取ることができます。
まずは日本の外務省(ハーグ室)に連絡して支援を求めるといいでしょう。日本の外務省とフランスの中央当局が連絡を取り合い、父親と子どもの居場所を探すなどの働きかけをしてくれます。
もっとも、実際に子の返還を受けるためには、子の返還請求の裁判をフランスで起こす必要があります。この裁判に勝った場合、子は日本に返還されることになりますが、必ずしも日本の自宅に戻されるとは限りません。
夫が任意に応じない場合には、フランスの裁判所に養育費支払訴訟を提起することになります。金額は、各夫婦の状況に応じて裁判官が決定します。日本のような算定表は存在していないので、裁判官の裁量によります。
日本人とフランス人の子どもの国籍は、日本とフランスになります。各国に対し出生届をすることを忘れないでください。
もっとも、日本は二重国籍を認めていないので、子が22歳(2022年4月1日から20歳)になった際に、国籍を選ばなければならないこととされています。

相続

  • ①被相続人が婚姻していなかった場合
    • 1. 第一順位
      子(子が死亡している場合は孫、孫が死亡している場合はひ孫、・・・)
    • 2. 第二順位
      親及び兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合はその子、その子が死亡している場合はその孫、・・・)
      親1人につき1/4の相続分、残りを兄弟姉妹が等分で相続する
    • 3. 第三順位
      両親以外の尊属
      父側尊属血族と母側尊属血族が1/2ずつ相続する。
      それぞれの尊属血族のうち、もっとも近い親等の者が相続する(同じ親等の者が複数いる場合は等分する。)。
    • 4. 傍系血族
      叔父、叔母、従兄弟姉妹
  • ②被相続人が婚姻していた場合
    • 1. 被相続人に子がいた場合
      生存配偶者は1/4、子が残りを相続する。
      もっとも、場合によって1/4の相続分の代わりに、遺産全体の使用権(usufruit)の相続を選択することができる
    • 2. 被相続人に子がおらず、親がいた場合
      親両親1人につき1/4の相続分、残りを生存配偶者が全て相続する
    • 3. 被相続人に子も、親もいなかった場合
      生存配偶者が全てを相続する
基本的に、相続人から委託を受けた公証人(notaire)が、相続財産及び相続分の確定、遺産の清算・配分、税金の申告等の諸手続を行います。
遺産の中に不動産が含まれる場合、遺産が一定額以上である場合等、公証人の介入は必須となることがあります。
なお、相続税申告は相続開始後6ヶ月以内(海外の場合は12ヶ月以内)にしなければなりません。
  • ①夫がフランス人である場合 フランスの法律に従って決定されます。
  • ②夫が日本人である場合 日本の法律(通則法)によると、被相続人の本国法が適用されることになります。従って、日本の法律に従うことになります。
    他方、死亡地であるフランスの法律(Règlement européenヨーロッパ条約)によると、原則として、死亡地の法律が適用されます。従って、フランスの法律に従うことになります。もっとも、遺言で本国法(日本法)を選択していた場合には、日本の法律に従うことになります。
    このため、従うべき法律を予め遺言で選択しておくといいでしょう。
フランス法においては、自筆遺言(testament olographe) 、公正証書遺言(testament authentique)、秘密遺言(testament mystique)が存在します。いずれについても、亡くなるまでの間に変更や撤回が可能です。
  • • 自筆遺言
    自筆遺言は、以下の3つの有効要件を備える必要があります。
    • • 文面の全てが自筆で書かれていること
    • • 作成日付け(年月日)が記載されていること
    • • 署名がされていること
  • • 公正証書遺言
    公正証書遺言は、公証人2名と証人2名の立ち会いの元、遺言者の申述内容を公証人が書き取ることによって作成される遺言です。
  • • 秘密遺言
    秘密遺言は、内容を誰にも知られることなく作成・保管される遺言です。封書に入れ、封緘・封印した遺言を、証人2名の立ち合いの元、公証人に預けるという手続きです。文面は全て自筆である必要はなく、パソコンで作成したものや第三者が代筆したものであっても通用します。もっとも、事前に中身を確認できないため、法律上適切な文言が使用されていなかった場合など、無効になる危険性があります。現在使用されることは極めて少ないようです。
    公正証書遺言・秘密遺言は、公証人が遺言センター(FCDDV)に登録し、死亡後の検索が可能となります。
    また、自筆遺言も作成後に公証人に保管を依頼することによって、遺言センター(FCDDV)への登録が可能となります。死亡後の検索が可能となるため、死亡後に遺言の存在が第三者に認識されないというリスクを回避することができます。
夫がフランス人でフランスで亡くなった場合には、原則としてフランス法が準拠法となります。フランス法でも、日本法の遺留分侵害額請求権と同じような考え方があり、被相続人が法定相続人以外の人に全財産を遺贈していたような場合でも、法定相続人に一定の権利が認められる場合があります。ただ、フランス法で第一の権利者は、被相続人の子になります。ですので、フランス人の夫に子がいた場合には、妻には遺留分侵害額請求権のような権利は認められません。子がいなかった場合には、妻は遺産の4分の1を限度に遺留分侵害額請求権を行使できることになります。

在留資格

3ヶ月以上の滞在であれば、ビザが必要になります。就労や家族を理由としないビザには以下のようなものがあります。
  • • 学生ビザ:就学や学位の取得等を目的とする場合。週20時間までの労働が可能。
  • • ビジタービザ:個人的な趣味や興味で滞在する場合。フランスでの労働はできず、資金証明が必要。
  • • ワーキングホリデービザ:1年間有効のビザ。取得可能年齢30歳まで。フランスでの労働が可能。

※なお、新型コロナウィルス感染症により、一定のビザ申請(ビジタービザ、ワーキングホリデービザ)が受け付けられない場合があります。

投資ビザとしては、投資家用パスポートタラン(Passeport Talent mention Investisseur économique)がありますが、30万ユーロ以上の投資、フランス国内における雇用創出等が要件になります。
企業家/自由業(Entrepreneur/Profession libérale)ビザ
パスポートタラン(passeport talent)
が考えられます。これらのビザは、実際に日本でヘアメイクとして生計を立てていること、フランスに移住した際も引き続き生計を立てられること(業務委託契約書や詳細なビジネスプランなど)の証明が必要になります。
まずは学生ビザ(1週間に20時間までの就労可能)やビジタービザ(就労不可)でフランスに移住し、語学力や人間関係を固めるというのも一つの方法です。
一般的には、企業内派遣ICTビザ(Salarié détaché ICT)とパスポート・タラン[派遣従業員](passeport talent en mission)が考えられます。
企業内派遣ICTビザは、更新可能期間が3年間に限定されているのに対し、パスポート・タランにはこのような期間限定がありません。もっとも、パスポート・タランを取得するには、一定額以上の給与を受給している必要があります。
他方、いずれのビザも居住者カード(Carte de résidence。日本の永住権に類似)の取得はできません。将来的に居住者カードの取得を予定するのであれば、現地採用によるビザを取得した方がいい場合もあります。この場合、いわゆる従業員ビザを取得することになりますが、事前にフランス当局から労働許可を得るという手続を経なければなりません。
どのビザが適切かは、状況や必要性に応じて異なります。まずは、弁護士に相談されるといいでしょう。
婚姻後、フランス婚姻証書謄本、フランス人配偶者の国籍を証明する書類等の必要書類を用意し、在日フランス大使館にてフランス人配偶者ビザの申請をするという流れになります
学生ビザやビジタービザが考えられます。
学生ビザの場合は、予めフランス現地の学校での入学許可を得て登録をしてから、在日フランス大使館にてビザ申請をします。滞在期間中の資金証明が必要です。また、申請前にcampus France(在日フランス大使館敷地内に所在)にて面接を受ける必要があります。
フランスで会社を作った場合のビザとして、起業家用パスポートタラン(Passeport Talent mention Création d’entreprise)が考えられますが、大学修士またはそれに相応する5年以上の職務経験があること、現実的なビジネスプランがあること等が条件になります。
企業形態や出資額によっては、投資家用パスポートタラン(Passeport Talent mention Investisseur économique)や、起業家/自由業用長期滞在ビザ(Entrepreneur/Profession libérale VLS-TS)の取得を考えてもよいでしょう。

会社経営

以下の通りです。
  • • 定款を作成
  • • 銀行に資本金を振り込む
  • • 商業裁判所へ登記
  • ①一人会社
    • • SASU(société par actions simplifiée unipersonnelle) 簡易一人株式会社:一人株主の株式会社。株主は出資の限度で責任を負う。株主兼取締役は従業員に準じて社会保険に加入し、法人税を支払う。
    • • EURL(entreprise unipersonnelle à responsabilité limité)有限一人企業:一人社員によって構成される会社。社員は出資の限度で責任を負う。一人社員は個人事業主に準じて社会保険に加入し、所得税を支払う。
  • ②株主二人以上の会社
    • • SA(Société anonyme)株式会社:株主は2人以上、最低資本金は37,000ユーロ。会社機関として取締役会(または監査役会)及び代表執行役(または代表執行役会)を備える必要がある。定款に株式譲渡禁止条項を入れられない。
    • • SAS(société par actions simplifiée簡易株式会社 : 株主は2人以上、最低資本金の定めはない。会社機関は代表取締役を1人備えれば、他は自由に決定できる。定款に株式譲渡禁止条項を入れられる。
    • • SARL(Société anonyme à responsabilité limitée)有限責任会社:社員が2人から100人までの閉鎖会社。株式は発行されず各社員が持分を有する。代表執行機関は一人または複数の取締役(gérant)のみ。
  • ③人的会社
    • • SCI(Société civile immo)不動産民事組合:組合員が2人以上の民事組合。各組合員は出資額の限度で責任を負う。組合の決議は全員一致が原則。不動産の売買・利用を行うときに利用されることが多い。
    • • SNC(Société en nom collectif)合名会社:社員2人以上の無限責任会社。全社員が商人である必要がある。各社員が会社を代表し、無限連帯責任を負う。
SA株式会社(最低資本金は37,000ユーロ)以外はありません。
SA株式会社以外は、代表業務執行機関が一人いれば足ります。

帰化

基本的に5年以上フランスに滞在していれば帰化の可能性があります。
その他の条件として、以下を満たす必要があります。
  • • 正規滞在であったこと
  • • フランス共和国の原則や、フランスの歴史・文化・社会について理解していること
  • • フランス語の能力があること
  • • 職務経験があること
  • • 素行が良好で刑事罰に課せられていないこと
手続きはオンラインでの申請となります。
https://www.service-public.fr/simulateur/calcul/Naturalisation
必要書類は申請者の状況によって異なりますが、パスポート、フランス在留証明書、学位証明書、労働契約書、給与明細、納税証明書、賃貸借契約書などです。
オンライン申請後、面接を受けて、フランス社会に適合している人物であるかが審査されます。また、面接時にはフランス国民としての義務と権利を果たす意思があるという書面にサインをさせられます。後日、帰化が認められるとサインをした日からフランス国籍が与えられます。
なお、日本国は二重国籍を認めていないことに注意しましょう。

刑事

フランスで逮捕されると、まず警察官によって取調べが行われます(garde à vue)。警察官逮捕の期間は通常24時間ですが、検察官または予審裁判官の決定によってさらに24時間延長され、合計48時間となることもあります(組織犯罪、テロ行為の場合にはさらに延長の可能性あり)。
48時間の逮捕後、検察官または予審裁判官によってさらに20時間の身柄拘束がされることがあります(合計68時間)。
その後、釈放される場合もありますが、予審裁判官の決定によって逮捕後勾留(détention provisoire)に移行する場合もあります。この逮捕後勾留期間は被疑事実によって最大4ヶ月または1年になることがありますが(但し、更新の可能性あり)、保釈の可能性があります(後述)。
※逮捕と同時進行で自宅の捜索差押、通話記録の解析などの捜査が行われることもあります。事案が複雑または重大な場合には、予審裁判官の指揮の下、捜査が行われます。
起訴をするかしないか、起訴をするとしてどの手続によるのか(予審裁判所に訴えるか、通常裁判所に訴える場合は略式手続か公判手続か、等)は、検察官が決定します。
公判手続に移行した場合は、被告人として質問に答え、意見を表明する権利があります。刑事事件の被疑者・被告人は、全刑事手続を通じて弁護人による弁護を受ける権利を有します(但し、逮捕の初期段階で制限される可能性あり)。
はい、あります。被疑事実が1年以上の拘禁刑にあたる場合、証拠の保全や公序維持の必要に基づき、裁判官の決定によって勾留されることがあります。この場合、保釈金を預けることによって身柄が解放される場合があります。

その他

はい、できます。購入者の国籍、在留資格にかかわらず、不動産購入は可能です。他方、フランスで不動産を購入したというだけの理由では、在留資格は得られません。
日本の判決を使って、フランスで強制執行をするためには、まずは、フランスの裁判所で執行命令を得る必要があります。この手続きの中では、日本の判決について、管轄権があったか、フランスの法観念に反しないか、当事者に詐害的な意図はなかったか、が審理されます。執行命令を得た後で、強制執行手続を取る必要があります。