国際離婚とは
国際離婚とは、当事者の一方が外国人である場合あるいは当事者の双方が日本人であっても外国に居住していたり、夫婦の財産が海外にあるなど、渉外的要素を含む離婚事件(渉外離婚事件)のことをいいます。
渉外離婚事件は、どの国に裁判管轄権があるのかという国際裁判管轄の問題、どの国の法律に従って離婚の効力を判断するかという準拠法の問題など、検討すべき問題は多岐に渡り、専門的な知識を必要とする、対応の難しい分野です。
この点、当事務所では、これまでに100件を超える渉外離婚事件の相談、取扱実績があり、長年積み重ねた専門的な知見を活かし、国際離婚にお悩みの皆様を全力でサポートいたします。渉外離婚事件でお悩みのお客様はお気軽に当事務所にご連絡相談ください。
国際離婚についての一般的説明
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- 1 国際離婚の方法
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国際離婚をする方法としては、以下の4つが考えられます。
① 協議離婚
② 調停離婚
③ 審判離婚
④ 裁判離婚
離婚について相手方が同意している場合には、①の協議離婚によることが簡便です。ただし、協議離婚制度を持たない国ではその効力が認められない可能性があるので注意する必要があります。
協議離婚が成立しない場合には、②ないし④の方法をとる必要があります。
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- 2 国際離婚の裁判管轄(日本で離婚裁判をすることができるか)
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(1)国際離婚の裁判管轄の考え方
渉外離婚事件の国際裁判管轄について、従来、日本法上、明文の規定が存在せず、実務では解釈に委ねられてきましたが、人事訴訟法等の一部を改正する法律が、平成30年4月18日に成立し、平成31年4月1日に施行されたことより、国際裁判管轄が明確になりました。
改正法によれば、以下のような場合には、国際裁判管轄が認められるものとされています。
① 被告の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき(改正後の人事訴訟法3条の2、1号)
② 夫婦が共に日本の国籍を有するとき(同条5号)
③ 原告の住所が日本国内にあり、かつ、夫婦の最後の共通の住所が日本国内にあるとき(同条6号)
④ 原告の住所が日本国内にあり、かつ、被告が行方不明であるときや被告の住所地国でされた同一の身分関係についての訴えに関する確定判決が日本で効力を有しないときなど、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があるとき(同条7号)
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(2)「行方不明」(改正後の人事訴訟法3条の2、7号)の証明方法
被告が行方不明であることを証明するためには、次のような資料を収集して、裁判所に提出することが考えられます。
① 原告本人の陳述書
② 被告の出入国履歴
③ 被告の本国の住所地から不送達により返送された手紙
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(3)「特別の事情があると認められるとき」(同条7号)とは
従来の実務の考え方によれば、相手方が一方的に本国へ帰国して遺棄された場合や、配偶者から外国においてDVを受け、日本に逃げ帰ってきたような場合には、改正後の人事訴訟法3条の2、7号が定める「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき」として、日本の裁判所に管轄が認められる可能性があると考えられます。
離婚訴訟における国際裁判管轄については、先に述べたとおりですが、調停についてはどうでしょうか。
人事訴訟法と同時に、家事事件手続法が改正されたことにより、家事調停事件についての管轄は、訴訟事件または家事審判事件について日本の裁判所が国際裁判管轄を持つときの他、これまでの実務でも認められていた合意管轄も明文で認められることになりました。(改正後の家事事件手続法3条の13)
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- 3 国際離婚の準拠法(どこの国の法律が適用されるか)
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(1)渉外離婚事件の準拠法については、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)に定めがあります。通則法27条によると、国際離婚の準拠法は、次のように規定されています。
① 夫婦の本国法が同一であるとき⇒当該本国法
(例:中国人夫婦の離婚⇒中国法)
② 夫婦の本国法が同一ではなく、夫婦の常居所地法が同一であるとき⇒当該常居所地法
(例:日本在住の中国人夫と韓国人妻の離婚⇒日本法
③ 夫婦の本国法が異なり、常居所地法も異なるとき ⇒夫婦に最も密接な関係がある地の法律
(例:日本在住の韓国人夫とアメリカ在住のアメリカ人妻、日本で知り合い結婚し、長年日本に居住していたが妻がアメリカに帰国して離婚を求めた⇒日本法)
④ 夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人⇒日本法
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(2)注意点
国際裁判管轄と準拠法の検討順序については、国際裁判管轄を先に検討する必要があります。日本に国際裁判管轄が認められないのであれば、日本の法律の一つである通則法の適用が問題となることもないからです。
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- 4 外国での離婚判決の日本における効力
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(1)外国で離婚判決を取得した場合、その効力が日本でも認められるかについては、民事訴訟法118条の規定によって判断されます。同法によると、次の4つの要件をすべてみたす場合には、外国判決が有効であるとされています。
① 法令・条約により当該外国裁判所に裁判権が認められること
② 敗訴した被告が訴訟の開始に必要な呼出し・命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと、または、これを受けなかったが応訴したこと
③ 判決の内容及び訴訟手続が日本の公序良俗に反しないこと
④ 相互保証があること
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(2)効力が認められない場合の具体例
以下のような場合には、外国離婚判決の効力が日本では認められない可能性があると考えられます。
① 被告である日本人が日本に居住しているにもかかわらず、呼び出しその他もなく一方的に外国で離婚判決が出された場合(①、②の要件を満たさない可能性があります)
② 裁判書類の送達が私人による直接郵便送達であった場合(②の要件を満たさない可能性があります)
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- 5 日本での離婚判決の外国における効力
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国によっては、外国における離婚手続を認めない国もあるようです。したがって、日本人と外国人が日本国内で離婚したとしても、当該外国人の国籍国において、再び離婚手続をしなければならない可能性がないとは言えません。離婚制度は国によって異なりますので、日本における離婚が当該外国人の国籍国においても有効とされるためには、どのような手続が必要なのか専門家にも確認して手続を進める必要があります。
なお、裁判所を介さず当事者の意思のみによって離婚する協議離婚制度を認める国は世界的には多くないと言われています。したがって、日本で協議離婚をしたとしても、協議離婚制度を持たない国ではその効力が認められない可能性があります。協議離婚が可能な場合でも、調停離婚・審判離婚を選択するということも考える必要があります。
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- 6 離婚と在留資格
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「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格で日本に在留していた外国人は、離婚によって在留資格の基礎となる地位を失います。そのため、在留資格の変更手続が必要となります。
3年程度婚姻の実態があり、安定した収入がある者については、離婚後も「定住者」の在留資格を取得できる可能性があります。
また、日本人配偶者と離婚後に日本人の実子の親権者として当該実子を監護養育しているような者については、収入がない場合(例:生活保護)であっても「定住者」の在留資格を取得することができます。
国際離婚を弁護士に依頼するメリット
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- 1 複雑な手続きについて専門家に任せることができる
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国際離婚をする場合には、調停や裁判等どのような方法で離婚の手続を進めていくかという問題や、どの国で裁判ができるかという国際裁判管轄の問題、どの国の法律を適用するかという準拠法の問題等、通常の日本人同士の離婚の場合に比べて、難しい問題を含むことが多いです。
たとえば、離婚の方法にしても、一方当事者の国では裁判離婚しか認めない制度である場合には、状況により、日本においても協議離婚ではなく、調停離婚や裁判離婚という方法を選択しておいた方がよい場合もあります。
また、国際裁判管轄の問題も、原則としては、相手方(被告)の住所地に裁判管轄を認めますが、例外的に、原告側の住所地に裁判管轄が認められる場合もありますので、相手方が外国にいる場合でも日本で裁判を進めることができる事例に該当するかを慎重に検討する必要があります。
国際離婚を弁護士に依頼するメリットとしては、このような複雑な法律問題について、専門家に任せることで、法律や従来の事例等の専門知識に基づき、的確に安心して手続を進めることができます。
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- 2 弁護士の職務権限を使って必要な調査をすることができる
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場合によっては、相手方である外国人が行方不明の状態となっており、日本にいるかも、外国にいるとしても、どこにいるのかが分からないといった状況もあると思います。
そのような場合でも、弁護士に依頼された場合には、弁護士が弁護士会を通じて入国管理局に照会をする等の方法により、相手方の出入国履歴その他の情報を調査することが可能です。
そのような調査を尽くした上で、相手方の住所が判明すれば、そこにコンタクトを取って離婚手続を進めていくことが可能になります。一方、弁護士による調査を尽くした上でも、相手方が行方不明である場合には、公示送達という方法で離婚裁判の手続を進めていくことができます。
国際離婚を依頼した際の費用
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- 1 交渉・調停による解決
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着手金 20万円~40万円+消費税
報酬金 20~40万円+得た経済的利益の4.8~19.2%+消費税
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- 2 訴訟による解決
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着手金 30万円~50万円+消費税
報酬金 30~50万円+得た経済的利益の4.8~19.2%+消費税
- ※調停から引き続き訴訟を受任する場合には追加着手金の金額を減額することがあります。
解決事例
以下に当事務所が手掛けた国際離婚の事例についてご紹介いたします。
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- Case 1(調停に代わる審判により外国に居住する夫との離婚が認められた事例)
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事案
当事者は日本国籍の女性と欧米のA国籍の男性です。女性は長年夫であるA国籍の男性と別居し、連絡もとっていませんでした。女性は、夫のA国における住所は知っていましたが、夫が現在もその住所に居住しているのか、また、夫が離婚に同意するのかについては不明でした。このような状況で離婚することができるのか、女性は藁にも縋る思いで相談に来ました。 -
解決方法
A国の夫の住所にEMSを送付したところ、夫に到達し、夫から弁護士宛に連絡がありました。夫としては離婚自体には異存はないが、日本の裁判所に出廷することなどは費用等の問題からできないとのことでした。そこで、夫が離婚に同意していることを示す書面を裁判所に提出し、調停の申立てをしました。裁判官は、当事者が離婚自体に合意していることを考慮し、調停に代わる審判により、離婚を認めました。
当事者の一方が日本に来日することができない場合でも離婚をすることができた事例の一つです。
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- Case 2(訴訟により所在不明の外国人夫との離婚が認められた事例)
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事案
当事者は日本国籍の女性とアジアのB国籍の男性です。女性は長年夫であるB国籍の男性と別居し、連絡もとっていませんでした。女性は夫のB国における住所は知っていましたが、夫が現在もその夫が現在もその住所に居住しているのか、また、夫が離婚に同意するのかについては不明でした。
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解決方法
B国の夫の住所にEMSを送付したところ、宛先不明ということで返送されてきてしまいました。当該住所以外に、女性は夫の居住地の手がかりをもっていなかったため、住所不明ということで、公示送達により、裁判を進めることとしました。
裁判では、女性が夫と長年別居状態にあり、連絡をとっていないこと、夫から暴力を受けていたことなどを主張立証し、無事離婚が認められました。
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- Case 3(重婚状態にある夫に対する離婚請求が認められた事例)
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事案
当事者は日本国籍の女性とアジアのC国籍の男性です。男性は、女性と日本で婚姻関係があるにもかかわらず、C国で別の女性と婚姻し、重婚状態にありました。そのことを知った女性は、夫と離婚することを希望していました。 -
解決方法
まず、日本の裁判所に調停の申立てをしましたが、調停がまとまらなかったため、訴訟を提起しました。訴訟では、夫がC国で重婚状態にあることを主張しました。夫は、重婚状態にあるが、その婚姻関係は形がい化しており、不貞関係もないとして争いましたが、最終的には、重婚状態にあることそれ自体から不貞関係の存在が推認されるとして、離婚を認める判決が下されました。
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- Case 4(訴訟により長年別居状態にある外国在住の外国籍妻との離婚が認められた事例)
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事案
依頼者は日本国籍の男性で、D国籍の妻と婚姻していましたが、長年別居し、連絡もとっていませんでした。相談時には、妻とは音信不通の状態のため、妻の正確な居場所や離婚についての意向も不明でした。- 解決方法
妻の正確な居場所が不明であったため、婚姻契約書に記載されている住所や、弁護士会照会を通じて明らかとなった外国人登録原票上の本国の住所に宛てて、EMSを送付したところ、そのうちの一つの住所地に到着したことが判明しました。
そこで男性は日本の裁判所に離婚訴訟を提起しました。裁判所からD国に訴状等の送達がなされましたが、被告(妻)は反論の書面を提出せず、期日当日も出廷はしませんでした。期日では、男性が妻と長年別居状態にあり、連絡をとっていないこと等を主張立証し、無事離婚が認められました。 - 解決方法
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- Case 5(審判により外国在住の外国籍妻から日本在住の日本人夫に対する婚姻費用の支払いが認められた事例)
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事案
依頼者は、E国籍の外国在住の女性で、日本に住む日本国籍の夫と婚姻していましたが、長年別居状態にあり、婚姻費用も支払われていませんでした。- 解決方法
まず、日本の裁判所に婚姻費用の支払いを求めて、調停を申し立てました。準拠法が、E国の法律となるため、同国の婚姻費用に関する法律を調査した上で、妻の生活費の不足額について主張立証をしました。
調停は不成立となり、審判になりましたが、審判では、婚姻費用として上記生活費の不足額について夫に支払いが命じられました。 - 解決方法
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- Case 6(訴訟→調停→調停に代わる審判により外国在住の外国籍夫との離婚が認められた事例)
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事案
依頼者は日本国籍の女性です。夫の本国であるF国で、夫や子どもと生活していましたが、夫のDVや不貞行為、薬物使用等があったことから、子どもを連れて帰国し、別居していました。依頼者は離婚を望んでいたものの、夫が応じず、交渉による離婚が難しいことから、日本で離婚手続を進めたいと、当事務所に相談に来られました。- 解決方法
夫はF国に居住していることから、夫のこれまでのDVや不貞に関する証拠とともに、日本の裁判所に調停を経ずに離婚訴訟を提起しました。外国送達を受けた夫が来日し、代理人弁護士を就けたことから、調停に付され、離婚に向けて話し合いが行われました。その結果、親権や面会交流、養育費、慰謝料等を定めた調停に代わる審判が裁判所から下され、離婚が成立しました。 - 解決方法
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- Case 7(欺罔行為による婚姻・離婚の無効が裁判で認められた事例)
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事案
依頼者は日本国籍の男性です。依頼者は、SNS上で知り合ったG国の女性から誘われ、G国を訪れたところ、関係者の欺罔行為により、女性との婚姻契約書にサインをさせられてしまいました。女性らから、日本でも婚姻届を出さないと犯罪になる、等と脅され、結婚の意思がないにもかかわらず、日本でも婚姻届を出してしまいました。依頼者は、女性らから脅され送金などを続けていましたが、送金を辞めたところ、女性らから離婚するように言われ、離婚届を提出しました。依頼者は、そもそも婚姻自体騙されて行ったものであるとの認識から、日本で婚姻無効及び離婚無効の手続きができないかと、当事務所に相談に来られました。- 解決方法
出入国在留管理局への調査の結果、女性が日本国内には居住していないことが明らかとなったことから、調停を経ずに、婚姻無効及び離婚無効の確認を求める訴訟を提起しました。また、女性のG国での居所が不明なことから、送達は、公示送達によってなされました。女性側からの答弁、反論等は何もなかったことで、依頼者の請求はすべて認められ、無事、両者の婚姻及び離婚が無効であることを確認するという内容の判決を得ることができました。 - 解決方法